PICK UP

     APHEX TWIN / Richard D.James Album

  評価 A+
まず言わせて、ジャケットがいい。 最初はすっごいイヤだったんですよ、「気持ち悪っ!」って。けどだんだん、「あれ?かっこよくね?」ってなって、「これほど不敵な笑みは見たことがねぇ、この世のものかを疑うほどひきこまれる、最高だ!」ってなりました。

音楽の話、轟音を想像していたので、1曲目は違和感がありました。「あれ?おとなしい。」そう思ったんですけど、しばらく聞いていくと「あれ?激しい。」って思ったり。まあ、これはまた後で。

ビートがいいですね。美しいほどです。縦横無尽に音が駆けめぐり、洪水のような厚みを出していて圧倒されます。ノイズと牧歌的なメロディに打ち込まれる電子音、まさに、狂気。まさしくこのジャケットから想像される音です。
「狂気」がこの音を1番あらわせていると思うが、それだけではない気がする。激しいビートのなかに安らぎを、うるさいほどの音の中に、ノイズの中に静寂を感じるのだ。聞いていると、そこらの癒し系の奴らなんかより安寧を感じ、落ち着いた時間が過ごせるのだ。思うに、これは海に見て安らぐのと同じではなかろうか。
ぶっ飛んだほどの暴力性と、何もできないような臆病さと、何の叙情も感じさせないような冷徹さと、全てをつつみこもうとする、無垢なまでの愛情を感じるのだ。 激しくておとなしい。ただ大きいと思う。そんな音を前にするから、こんな大きい音滅多と聞かないから、これに、狂気と安寧を感じるのだろう。
まあ、こんなん聞いてねぇで海行ってこいって感じですけどね。
     Iggy Pop & The Stooges / Raw Power
 評価 S
ストゥージーズ時代のイギーポップは凄すぎる。パワフルというかここまで溢れそうな勢いを持った人はそういないんじゃないかと思う。彼のキャリアのなかでの最高傑作だと思わせるこのアルバムはうるさいまでに疾走しているR&Rです。血湧き踊りますよ。特に1曲目は必聴。歌詞も痛烈です。

1曲目の「Search and Destroy」はいつ聞いてもいい。興奮しますね。3曲目も抑えきれない衝動を感じる最高の曲です。こんだけやかましくギターをならしてシャウトしているのにどこかPOP、ここが真似しがたい所で、イギーの魅力ですね。4曲目の不気味なヴォーカルもGood。タイトル曲の5曲目は正統派なR&R、痛いまでに鋭いです。鈍い曲とを交互にいれているのもありより、とがって聞こえます。
イギーの声は汚く、気持ち悪い。まるで全てをはき出しているようです。人間性というか、その人そのものをぶつけられているかのごとく。人間の汚さと美しさ両方をぶつけてきます。ゆえに、気持ち悪くてたまらなく魅力的でかっこいい。そんな理不尽なまでの生きる力を感じられるから、僕はイギーの声がたまらなく好きだ。トップ5にはいるであろうヴォーカリスト。

     incubus / S.C.I.E.N.C.E.
 評価 A-
インキュバスのメジャーデビューアルバムです。このころの彼らはミクスチャーロックのジャンルにはいってました。「混合」という意味じゃ今も変わらないのですが、このアルバムではラップしてます。 インキュバスの原点といえるようなアルバムで今後のヘヴィロックと呼ばれる音がもう出来上がっています。

音の厚みに圧倒されます。それでいて重すぎずノリの良い仕上がりは見事といえます。爆発という言葉がよく似合うアルバムです。これからの成熟した音のほうがやっぱり好きですが、バンドの初期にしか在り得ない衝動、爆発力には押しつぶされそうですが、引くところがうまく引けてない印象をうけました。曲のつくりはうまく変えてきて飽きさせないのですが、曲調というか曲からうける印象の変化があまりなくて今ひとつ。あと、このジャケットは嫌。浮かび上がるオヤジのちょっと満足そうなにやけ面がストレス。
      Incubus / Make Yourself
 評価 A
インキュバスの2nd(正確には3)アルバムです。確実に成長をとげたことがつたわってくる名作。前作とはちがって爆発しそうな吹っ飛んだ世界はない。が、湿っているような押しつぶされるような音になり、前作より大きくなったことがうかがえる。「Morning view」も最高だけど、こっちも必聴の名盤。

1曲目から音の厚みに圧倒されます。前作よりすごい。スケールが大きくなってます。前作より先にきいたから入れ違っていますが、聞いてから2ndのほうがでけぇやと思ったわけです。ヒットした8曲目「Drive」のようなアコースティックな曲も入り、一層多種多様のジャンルの音が混ざっている知的なヘヴィロックです。民族楽器の導入も大きいですね。
粒ぞろいの佳曲ばかりですので、ぜひ聞いてみてください。優しく歌い上げるヴォーカルはやみつきになります。男前だし。
     Incubus / Morning View
 評価 S
チャート初登場2位にもなったインキュバスの最高傑作です。色んなことを試してまとまったアルバムをつくってきてたどり着いた高い完成度を誇るアルバムがこれで、これ以上、というかこれと今までと似た方向性でのこれを超すアルバムはもう作らないだろう。れない のではなくて らないのだ。そういう意味では最高傑作ということばはおかしくて、まとまった一つの終着点というべきだろう。めんどいし、分かりづらいから僕は最高傑作ってよびますけど。
1曲目からやられました。音の厚みに圧倒(またかよ!)されます。これがインキュバス初体験だったのですが、一聴したときからとりこになりました。ギターもヴォーカルもリズム隊も最高です。アルバムを続けてきいてみると、これは、ずいぶんとソフトな仕上がりとなっていますが、今までの作品に全然引けをとらないです。このアルバムから受ける印象は、「不発弾」 爆発しなかった失敗作とかいうんじゃなくて、抑えられているというか、破裂しそうな勢いと力があるのにやけに静かで、とんでもない存在感のある音だとおもいます。
変幻自在の彼らの音楽性はより色んなものが混ざり、完璧なまでの完成度です。全曲いいからきいてみて。民族的なのからヘヴィロックなのやしっとりとした音まで色んなものがきれいにまとめられています。たまらなくいいです。
     Incubus / A crow left of the muder...
 評価 B-〜A-(レビューよんでみて
「群れから離れた一羽の烏」 そうつけられたアルバムタイトルは彼らの音楽性を表しているようで、宣伝めいているうまいネーミングだと思います。「ヘヴィロックでは言い表せない音」なんて聞き飽きたわけで、こんなので騒ぐメディア等の話題作りですか。まぁ、実際に今までとは違った音を聞かせてくれます。前作であれほどの完成度をみせた後としては変貌をとげなければバンドが終わってしまいますし、この変貌も当然とはいえますが。
今までの音、ミクスチャーとヘヴィロックシーンからの逸脱。たしかにアルバムタイトル通りなのだが、正統派な音になってしまったような印象をうける。普通なラウド・ハード・ロック
1曲目のような絶妙な曲作りや、2曲目のような盛り上げのうまさもみせてくれるが、どうにもパッとしない音になってしまった。が、そのありがちな音でもそこらのバンドよりよっぽど上手くきかせてくれるのが、逆に口惜しい。「イマイチだけどやっぱりインキュバスはいいぜ」 みたいな。変貌をとげるにしてももっと鮮やかにやるか、もしくはズタボロなぐらいひどい音でも思い切ってやってほしかった。「群れから離れた」とかじゃなくて「烏から猫に」級の変化をがいいと思う。結局ひきずってんじゃねぇかよ。正統派の中に自分たちの音を少し入れていくというのは、実にうまい曲作りなのだろうが、インキュバスにはもっと期待をよせてしまう。評価をつけるならB+ぐらいだと思うが、個人的感情をこめてB−で。